【水害を防ぐ】道路の冠水対策にはどんな方法がある?工事の種類を紹介
近年、局地的な集中豪雨やゲリラ豪雨の増加により、道路の冠水被害が深刻化しています。
都市部では排水処理能力を超える雨が短時間に降り、交通麻痺や浸水被害が頻発しています。
官公庁の土木職として道路や河川の維持管理に携わる方にとって、限られた予算と人員の中で、いかに効果的な冠水対策を講じるかは避けて通れない課題です。
本記事では、冠水のメカニズムから具体的な対策工事まで、現場実務に役立つ情報を整理して解説します。
そもそも冠水とは?
冠水とは、道路や田畑などの屋外の地表が水で覆われてしまった状態のことです。台風や集中豪雨などの影響により、路面一帯が大きな水たまりのように水が溢れてしまう現象を指します。
よく混同される用語に「浸水」がありますが、明確な違いがあります。
冠水は道路や土地など屋外の地表が水で覆われる状態を指すのに対し、浸水は建物や車両の内部に水が入り込む状態を指します。「床上浸水」や「床下浸水」といった表現で使われます。
両者は発生するメカニズムや影響範囲は似ていますが、被害の対象が異なります。冠水は主に交通インフラや土地利用に影響を及ぼし、浸水は建物内部や人的被害に直結します。
| 項目 | 冠水 | 浸水 |
| 発生場所 | 道路・土地など屋外の地表 | 建物・車両などの内部 |
| 主な原因 | 豪雨・排水能力不足 | 豪雨・河川氾濫の影響 |
| 主な影響 | 交通麻痺・通行止め | 建物被害・人的被害 |
| 主な対策 | 排水施設整備・貯留施設 | 建物防水・止水対策 |
冠水の原因となる氾濫の種類
道路の冠水を引き起こす主な原因は、河川や水路の氾濫です。
氾濫には大きく分けて「内水氾濫」と「外水氾濫」の2種類があり、それぞれメカニズムと対策が異なります。
内水氾濫はさらに氾濫型・湛水型に分類され、都市部で発生する冠水の多くは内水氾濫に起因します。一方、外水氾濫は河川の堤防決壊や越水によって起こり、広域かつ甚大な被害をもたらします。
氾濫型の内水氾濫
氾濫型の内水氾濫は、短時間に大量の雨が降ることで排水施設の処理能力が追いつかず、雨水が地表に溢れ出る現象です。
通常、雨水は道路わきの側溝から下水管や雨水管を通り、河川へ排水されます。しかし、想定を超える降雨が短時間に集中すると、排水施設の処理能力が追いつかなくなります。その結果、行き場を失った雨水が路面に溢れ出し、道路の冠水が発生します。
この問題は、とくに都市部で深刻なものとなっています。
都市部のアスファルトやコンクリートで覆われた地表は、雨水を吸収できないため、すべての雨水が排水施設に集中します。近年増加しているゲリラ豪雨では、1時間あたりに50mmを超える雨量が観測されることもあり、多くの排水施設の設計基準を上回っています。
このような事情があるため、氾濫型の内水氾濫は河川周辺地域に限らず、平坦な市街地や低地でも発生するのです。幅広いエリアでの対策が必要といえるでしょう。
湛水型の内水氾濫
湛水型の内水氾濫は、河川の水位上昇により周辺の雨水が排水できなくなることで発生します。
大雨で河川の水位が上がると、通常は河川へ流れ込むはずの雨水が排水できなくなります。排水路や下水道の出口が河川の高い水位によってふさがれ、雨水が行き場を失って滞留します。これを「バックウォーター現象」と呼びます。
河川沿いの低地や河口付近で発生しやすく、台風や長時間の降雨時にとくに注意が必要です。河川の水位と降雨のタイミングが重なると、被害が拡大します。
外水氾濫
外水氾濫は、河川の堤防が決壊したり、河川の水が堤防を越えて溢れ出す現象です。
大雨により河川の水位が異常に上昇すると、堤防の高さを超えて水が溢れたり、水圧により堤防が決壊したりします。氾濫した水は周辺地域に一気に広がり、広範囲にわたって甚大な被害をもたらします。
内水氾濫と比較して被害の規模が大きく、道路の冠水だけでなく建物の浸水や人的被害につながりやすい特徴があります。2019年の台風19号では、各地で外水氾濫が発生し、多くの地域で深刻な被害が生じました。
外水氾濫への対策には河川堤防の強化や遊水地の整備など大規模なインフラ整備が必要となるため、国や都道府県レベルでの計画的な取り組みが求められます。
都市部ではゲリラ豪雨や台風による「都市型水害」が頻発
都市部における冠水被害は「都市型水害」として深刻化しています。都市部で冠水リスクが高まっている主な理由は、次のとおりです。
- アスファルトやコンクリート舗装により、雨水が地中に浸透しにくい
- 都市化により、保水・遊水機能を持つ土地が減少している
- ヒートアイランド現象により、積乱雲が発達しやすい
- 地球温暖化の影響で、短時間に強い雨が降るケースが増加している
都市部では地表の大部分がアスファルトやコンクリートで覆われているため、雨水が地中に浸透できません。かつて田畑や森林が担っていた保水・遊水機能が失われ、降った雨水はすべて排水施設に流れ込みます。
また、都市部特有のヒートアイランド現象の影響により、周辺地域よりも気温が高くなりやすい傾向があります。この温度差が積乱雲の発達を促し、局地的な集中豪雨(ゲリラ豪雨)につながるでしょう。
さらに、地球温暖化の影響で大気中の水蒸気量が増加しており、短時間に強い雨が降るケースは年々増加しています。
多くの排水施設は、1時間あたり50mm程度の降雨を想定して設計されていますが、近年は80mmや100mmを超える豪雨が発生するケースも珍しくありません。気象庁の統計によると、1時間あたり降水量80mm以上の年間発生回数は、50年前と比べ約1.7倍に増加しています。
都市部では地下街や地下鉄などの地下空間の利用も進んでおり、冠水が発生すると地下に流れ込んで被害が拡大します。交通インフラの麻痺により経済活動にも大きな影響を及ぼすため、都市部における冠水対策の重要性はますます高まっています。
出典:気象庁ホームページ「大雨や猛暑日など(極端現象)のこれまでの変化」
冠水対策は今後ますます重要に!
気候変動の影響により、冠水リスクは今後さらに高まると予測されています。
【冠水リスクが高まっている背景】
- 短時間に強い雨が降るケースが増加している
- 線状降水帯の発生頻度が高まっている
- 都市化の進展により、雨水が地中に浸透しにくい
国土交通省の調査によると、過去10年間に全国の市区町村の約97%で水害が発生しています。これは、ほぼすべての地域が水害リスクに直面していることを意味します。とくに都市部では、一度の豪雨で広範囲に冠水が発生し、交通麻痺や多数の帰宅困難者が発生するケースが増えています。
線状降水帯の発生頻度も増加傾向にあります。線状降水帯とは、積乱雲が次々と発生して列をなし、同じ場所で長時間にわたって大雨を降らせる気象現象です。2020年の令和2年7月豪雨では、熊本県や岐阜県で甚大な被害が発生しました。
こうした状況を受けて、国や自治体、企業では冠水対策の見直しや新たな取り組みが急速に進んでいます。
【進められている主な冠水対策】
- ハザードマップの整備や避難情報の発信強化(ソフト対策)
- 排水施設の能力向上や雨水貯留施設の整備(ハード対策)
ソフト面では、ハザードマップの整備や避難情報の発信強化が行われています。ハード面では、排水施設の増強や雨水貯留施設の整備が各地で進行中です。
限られた予算と人員の中で効果的な対策を講じるためには、地域の特性やリスクを正確に把握し、優先順位を明確にすることが重要です。老朽化したインフラの維持管理と新規整備を並行して進めなければならない状況では、計画的かつ戦略的なアプローチが求められます。
出典:国土交通省ホームページ「我が国の水害リスクの現状」
出典:気象庁ホームページ「令和2年7月豪雨令和2年(2020年)7月3日~7月31日(速報)」
被害を防ぐ・食い止める!冠水対策の工事の例
冠水被害を防ぐためには、ハード面での抜本的な対策が不可欠です。ここでは、実際に各地で導入されている具体的な工事例を紹介します。
押さえておくべきは、単一の対策ではなく、複数の手法を組み合わせた総合的なアプローチです。冠水対策を検討する際は、次の視点が重要です。
- 地域の地形や排水条件
- 過去の冠水履歴や被害状況
- 予算規模と施工期間
- 短期対策と中長期対策のバランス
雨水貯留槽:雨水を一時的に貯留
雨水貯留槽は、大量の雨水を一時的に貯留し、下水道や河川への流出を時間的に分散させる施設です。都市部のゲリラ豪雨対策として、高い効果が期待できます。
短時間に集中する雨水を一時的に貯留することで、下水道や河川への負荷を軽減します。雨のピークが過ぎた後、ゆっくりと排水することで、排水施設の処理能力内に収めることができます。
設置場所としては、公園や学校のグラウンドの地下、道路の下、駐車場の地下などが一般的です。地下に設置するため、地上の土地利用を妨げることなく設置できる利点があります。
雨水貯留槽には、大きく分けてコンクリート製とプラスチック製の2種類があります。
- コンクリート製:強度が高く、車両などの荷重がかかる場所への設置が可能
- プラスチック製:軽量で施工しやすい一方、設置場所には荷重制限がある
設置条件や利用目的に応じて、適切な種類を選定することが重要です。
フジコンでは、高品質なコンクリート製及びプラスティック製の雨水貯留槽を提供しています。道路下への設置にも対応できる強度を持ち、長期間にわたって安定した機能を発揮します。設計に必要なCAD図面は、フジコンのCAD図面ダウンロードページから無料で入手できます。
会員登録などの手続きは不要で、必要な図面をすぐにダウンロードして設計に活用いただけます。
防火水槽:火災時に消防車へ水を供給
防火水槽は、主に火災時の消火用水を確保するための施設ですが、近年は雨水の一時貯留機能を兼ねたタイプが注目されています。
【防火水槽の主な役割】
- 火災発生時に、消防車へ安定した水を供給する
- 消火栓が使用できない場合のバックアップ設備
- 水道管破損時の非常用水源
【近年の防火水槽の特徴】
- ボックスカルバートを用いた地下水槽として設置されるケースが増加
- 平常時は雨水を一時貯留し、豪雨時の流出を抑制
- 緊急時には消防用水として活用できる多機能型
防火水槽の本来の役割は、火災発生時に消防車へ水を供給することです。消火栓が使用できない場合や、水道管が破損した際の備えとして重要な施設です。設置が義務付けられている地域も多く、インフラ整備の一環として各地に配置されています。
近年では、ボックスカルバートを組み合わせた地下水槽として設置されるケースが増えています。平常時は雨水を一時貯留し、緊急時には消防用水として活用できる多機能型です。ただし、消防用水として機能させるためには、防水性能を確保する必要があります。
防火水槽を整備することで、火災対策と冠水対策を同時に進めることが可能です。限られた予算の中で、効率的にインフラ整備を行う手法として有効だといえます。
フジコンでは、防火水槽にも対応したコンクリート製品を取り扱っています。消防法の基準を満たしつつ、地下貯留槽・ 冠水対策製品の図面を提供しています。
側溝や下水道の能力向上
既存の排水施設の能力を高めることは、冠水対策の基本です。管路や側溝を改修することで、雨水を速やかに排水できるようになります。
【排水管の能力向上の方法】
- 既存管よりも断面の大きい管への入れ替え
- 処理能力を補うためのバイパス管の増設
排水管の能力向上には、太い管への入れ替えやバイパス管の増設があります。既存の管路では処理しきれない雨水量に対応するため、より大きな断面の管に交換したり、並行して別の管路を設置したりします。
【側溝改修による排水性能の向上】
- インバート付き側溝による流速の向上
- 土砂が溜まりにくい構造の採用による維持管理負担の軽減
側溝の改修では、水の流れをスムーズにする構造への変更が効果的です。インバート付き側溝は、底部に半円形の溝を設けることで水の流速を高め、排水能力を向上させます。また、土砂が溜まりにくい構造の側溝を選ぶことで、メンテナンスの手間を軽減できます。
フジコンが提供する自由勾配側溝は、現場の地形条件に合わせて勾配を調整でき、効率的な排水が可能です。また、ハイブリッド側溝 消音U形側溝(HB-PU)は、環境に配慮しながら高い排水性能を持ち、ライン導水ブロックは、従来のL型側溝よりも高い排水性能を発揮します。これらの製品は、道路の改修工事や新設工事において、冠水対策として広く採用されています。
側溝の選定にあたっては、設置場所の条件や予算を考慮することが重要です。フジコンでは豊富な製品ラインナップを用意しており、最適な製品選択のための技術資料やCAD図面を無料で提供しています。
排水溝や水路の数を増やす
排水口の数を増やすことで、雨水を速やかに排水できるようになり、道路冠水のリスクを軽減できます。
【排水口・水路増設の主な手法】
- 道路脇への排水口の増設
- 浸透桝の設置による地下浸透の促進
浸透桝の設置は、効果的な対策のひとつです。浸透桝とは、雨水を一時的に溜めながら地中に浸透させる設備で、排水口を増やすとともに地下への浸透を促進します。道路脇に適切な間隔で配置することで、局地的な冠水を防ぐことができます。
排水口の増設は、比較的短期間で実施できる対策です。大規模な工事をともなわずに効果が得られるため、人員不足に悩む自治体にとって実効性の高い手段といえます。
ただし、排水口を増やすだけでは根本的な解決にならない場合もあります。下流の排水施設の能力が不足していれば、そちらで処理しきれずに冠水が発生します。排水システム全体のバランスを考慮した計画が必要です。
排水設備の定期的なメンテナンス
どれだけ優れた排水施設を整備しても、適切なメンテナンスがなければ本来の機能を発揮できません。
【メンテナンスが重要な理由】
- 落ち葉やゴミの詰まりにより排水能力が低下する
- 秋季は落ち葉が増え、冠水リスクが高まる
- 老朽化による破損やひび割れが排水機能を損なう
落ち葉やゴミが排水溝に詰まると、排水能力が大幅に低下します。とくに秋季には落ち葉が増えるため、重点的な清掃が必要です。定期的な点検と清掃により、詰まりを未然に防ぐことができます。
老朽化した施設の点検も重要です。側溝の破損や管路のひび割れがあると、排水機能が損なわれます。早期に発見して修繕することで、大規模な被害を防げます。
こうしたメンテナンスは地道な作業ですが、冠水対策としては非常に重要です。メンテナンスを行う際は優先順位を明確にし、計画的に進めることが求められます。地域住民の協力を得ることも、効果的な維持管理につながります。
まとめ
道路の冠水対策は、都市型水害の深刻化にともない、ますます重要性を増しています。内水氾濫のメカニズムを理解し、地域の特性に合わせた対策を講じることが、被害を最小限に抑えるために重要です。
【本記事のポイント】
- 都市部では内水氾濫による道路冠水が増加している
- 冠水対策には、原因に応じた工事手法の選定が重要
- 雨水貯留槽や高機能側溝は、都市型水害に有効
- 維持管理と定期的な点検が、対策効果を左右する
雨水貯留槽や側溝の改修といったハード対策に加え、日常的な維持管理を組み合わせることで、冠水リスクを継続的に低減できます。
私たちフジコンは、昭和47年の創業から、コンクリート二次製品の製造・販売を通じて、道路・河川・都市インフラの整備を支えてきました。雨水貯留槽や側溝、ボックスカルバートなど、冠水対策に必要な製品を幅広く取り揃えています。
設計・検討段階ですぐに活用できるよう、製品のCAD図面は無料で公開しています。会員登録は不要で、各種形式に対応しているため、計画検討や設計作業にそのままお使いいただけます。
課題解決は、信頼できるコンクリート二次製品の導入から始まります。安全で強靭なインフラ整備のために、フジコンの技術力とサービスをご活用ください。