コラム

土留めとは?役割や擁壁との違い、工法・種類を分かりやすく解説

斜面や段差のわきに、コンクリートの壁を見かけたことはないでしょうか。その多くは、土砂の崩壊を防ぐために設けられた「土留め」という構造物です。放っておけば少しずつ形を変えていく地盤を、静かに支え続ける縁の下の存在といえます。

この記事では、土留めの基本的な役割から擁壁との違い、必要となる場面、そして代表的な工法までを順を追って整理します。土地の安全性を確認したい方にとって、判断の土台となる知識をお届けします。

土留めとは?

土留めとは、盛土や切土によってできる「法面」と呼ばれる斜面や、段差が崩れないように土圧を支える構造物や工法全般を指す言葉です。法面とは、人の手によって斜めに削られたり盛られたりした地面のことです。

自然の地盤は、雨水がしみ込んだり振動が加わったりするたびに、少しずつ崩れやすくなっていきます。土留めは、こうした自然の力に対して人工的に土を押さえ込み、地盤や周辺の安全を確保する役割を担っています。

土留めの規模はさまざまです。庭先の小さな花壇の縁石から、宅地造成や大規模な工事現場で使われる構造物まで、対象となる土地の状況に応じて工法や材料が選ばれます。

土留めと擁壁の違い

土留めと擁壁は、しばしば同じ意味で使われますが、厳密には異なります。

工事中だけ設置する仮設の壁も、恒久的に残る構造物も、どちらも土留めに含まれる広い概念です。一方、擁壁はコンクリートや石などでつくられた土留めの一種です。長期間にわたって土を支え続ける恒久的な構造物として設置されます。

土留めにはさまざまな方法があり、擁壁はその代表的なもののひとつです。工事期間だけ設ける仮設の土留め壁と異なり、擁壁は一度築造すると数十年単位で使用されます。そのため、材料の耐久性や施工の品質がとくに重要になります。

こちらの記事では、擁壁について解説しています。
耐用年数に関しても取り上げているため、ぜひあわせてご覧ください。

土留めの主な役割

土留めには、単に土砂を押さえるだけでなく、土地を安全かつ有効に使うための役割があります。ここでは、代表的な2つの役割を紹介します。

土砂崩れや地盤崩落を防ぐ

土留めの最も基本的な役割は、土砂崩れや地盤の崩落を防ぐことです。切土や盛土によってできた法面は、そのままにしておくと、雨水がしみ込んだ際に強度が下がり、崩れるおそれがあります。

土留めを設けることで、土圧に対する構造的な抵抗力が生まれ、崩落のリスクを大きく減らせます。こうした地盤の安定は、専門的な話に思えるかもしれません。しかし、多くの人が日常のなかで感じている身近な関心事でもあります。

実際、株式会社NEXERと藤岡コンクリート工業株式会社が共同で実施したアンケート調査では「道路インフラ(舗装、側溝、排水など)の状態が住環境に影響すると思いますか?」という質問に対し「とても影響すると思う」「やや影響すると思う」と回答した人が合わせて7割を超えました。

たとえば、道路脇の地盤が軟弱だと、災害時に崩れてしまうのではと不安に感じる人も少なくないでしょう。道路インフラの状態は、目に見える舗装や排水設備だけでなく、それらを支える地盤や構造物まで含めて考えることが重要だといえます。

こうした関心の高さは、道路インフラを支える地盤や構造物にも、住民の目が向きやすいことを示しているといえるでしょう。舗装や排水設備の下には、土留めや擁壁のように、普段は意識されにくいものの、暮らしの安全を静かに支えている構造物があります。

アンケート引用元(PR TIMES):https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002889.000044800.html

隣接する土地との境界を明確にできる

土留めは、隣接する土地との境界を視覚的に明確にする役割も果たします。高低差のある土地をそのまま放置すると、境界線があいまいになり、将来的なトラブルの原因になりかねません。

土留めによって高さの違いをはっきりさせることで、境界を巡る争いを未然に防ぎやすくなります。なお、設置した土留めや擁壁に不具合があり、それが原因で隣地に損害を与えた場合には、民法第717条に定める土地工作物責任が問題になることがあります。

この規定では、まず工作物を管理する占有者が責任を負い、占有者に過失がなければ所有者が責任を負うとされています。境界の明確化だけでなく、その後の維持管理まで見据えて計画することが欠かせません。

出典:e-Gov法令検索「土地の工作物等の占有者及び所有者の責任」

土留めが必要になる場面

土留めは、どのような場面で計画すべきなのでしょうか。ここでは、代表的な3つの場面を整理します。

地盤の掘削作業を行うとき

地盤を掘削する際には、掘削の深さに応じて土留めの設置が求められます。国土交通省が定める「建設工事公衆災害防止対策要綱」では、掘削の深さが1.5mを超える場合、原則として土留めのための構造物や工法を施すこととされています。

あわせて、労働安全衛生規則では、地山の崩壊や土砂の落下により労働者に危険が及ぶおそれがあるときに、土止め支保工(掘削した地盤の崩壊を防ぐための支保構造)などの措置を義務づけています。この1.5mという数値は、あくまで安全な作業環境を確保するための基準です。

なお、後述する「高さ2mを超える工作物の確認申請」とは異なる基準であるため、混同すると必要な安全対策が不足するおそれがあります。

実際に、土留めの設置が不十分なまま掘削を進めたことで、作業員が生き埋めになる事故も報告されています。深さわずか数mの掘削であっても、地山の状態や周辺環境によっては重大な事故につながります。施工計画と実際の作業内容にずれがないよう、継続的な確認が求められます。

出典:国土交通省「建設工事公衆災害防止対策要綱の解説」

出典:国土交通省「【新旧対比表】建設工事公衆災害防止対策要綱(土木工事編)」

出典:e-Gov法令検索「労働安全衛生規則」

出典:日経クロステック「土留めせずに深さ3m掘削 下水道工事中の崩落で生き埋め」

隣地との境界に斜面があるとき

敷地の一部に斜面が残っていると、その部分を十分に活用できない状態になってしまいます。

土留めを設けて斜面を垂直に近い形へ整えることで、使える面積を広げられるという実務的なメリットがあります。また、建築物ががけ崩れなどによる被害を受けるおそれがある場合には、建築基準法にもとづき、擁壁の設置など安全上必要な措置を講じなければならないとされています。

斜面をそのままにしておくと、土地を有効に活用できないだけでなく、法令上の対応が後回しになるおそれもあります。早い段階での検討が望まれます。

出典:e-Gov法令検索「建築基準法」

がけ条例によって求められるとき

建築基準法の規定を受けて、各自治体は独自に「がけ条例」と呼ばれる規則を定めています。多くの自治体では、一定の角度を超える傾斜地で、高さが基準を超える場合を「がけ」と定義しています。

がけ上およびがけ下に建築物を建てる際には、擁壁の設置や一定の離隔距離の確保を求めています。なお、対象となる高さや角度、緩和条件は、自治体によって細かく異なります。

既存の擁壁がすでに検査済証を取得しており、経年劣化が見られず安全性が確認できる場合には、新たな擁壁の設置が求められないケースもあります。同じような土地であっても、所在地によって求められる対応が変わるため、計画の初期段階で該当する自治体の窓口に確認しておく必要があります。

土留めの主な工法と種類ごとの特徴

土留めには、いくつもの工法があります。ここでは、大きく「土留め壁」「土留め掘削」「建築のための土留め」の3つに分けて紹介します。

土留め壁

土留め壁は、掘削作業の際に周囲の地盤が崩れないよう、仮設の壁体を設けて土圧を支える工法です。地盤の硬さや地下水の有無、周辺への振動・騒音の影響などを踏まえ、いくつかの工法から選ばれます。

工事が終われば撤去することを前提とした仮設構造物です。しかし、施工中の安全性を左右する重要な工種であり、地盤条件に見合った工法を選ぶ必要があります。

親杭横矢板工法

H形鋼などの親杭を一定間隔で地中に打ち込み、掘削の進行にあわせて親杭の間に木製や鋼製の横矢板を差し込んでいく工法です。比較的コストを抑えやすく、施工も進めやすい一方、水を通しにくい性質である「遮水性」がないため、地下水位が高い場所には向いていません。

鋼矢板工法

シートパイルと呼ばれる鋼製の板状部材を、継ぎ手をかみ合わせながら連続して地中に打ち込む工法です。遮水性に優れているため、地下水位の高い地盤や軟弱な地盤でも採用しやすいという特徴があります。

鋼管矢板工法

鋼管を継ぎ手でつなぎながら地中に打ち込む工法です。剛性と遮水性がともに高く、大きな荷重がかかる大規模な工事や、軟弱地盤での施工に適しています。

地中連続壁工法

地中に溝状の掘削を行い、鉄筋を組み込んだうえでコンクリートを打設して連続した壁を築く工法です。遮水性・剛性ともに高く、大規模な地下構造物の施工などに用いられます。ただし、他の工法に比べて工期や費用がかかりやすい傾向があります。

土留め掘削

土留め掘削は、施工スペースの広さや掘削の深さに応じて使い分けられる工法です。周辺に確保できる敷地の広さや、地盤の状態、必要な掘削面積によって適した方法が変わります。ここでは、代表的な4つの工法を紹介します。

のり切りオープンカット工法

掘削した周囲に安定した法面を残しながら掘削を進める工法です。土留め壁を使わないため、比較的コストを抑えられます。ただし、敷地に余裕が必要で、軟弱な地盤には向いていません。

全断面掘削工法(土留め壁オープンカット工法)

土留め壁や切梁、腹起しなどを使いながら、全体を一度に掘削する工法です。施工の制約が少なく、比較的多くの現場で採用されています。

アイランド工法

掘削範囲の中央部に先行して構造物を築き、その後、周囲を掘削しながら残りの部分を施工する工法です。中央部分では切梁が不要になるため、作業効率を高めやすい一方、施工が2段階に分かれるため、工期は長くなる傾向があります。

トレンチカット工法

構造物の外周部分を溝状に掘削して、あらかじめ地下構造物を築きます。その構造物で土圧を支えながら、内部を掘削していく工法です。地盤の状態が悪く、掘削深さが深いうえに広い面積が必要な現場に適しています。

建築のための土留め

恒久的な構造物として土地を支える場合には、擁壁が用いられます。ここでは、代表的な2つの種類を紹介します。

コンクリート擁壁

コンクリート擁壁は、L型やもたれ式など、さまざまな形状で設計される恒久的な土留め構造物です。現場でコンクリートを打設してつくる方法のほか、あらかじめ工場で製造されたコンクリート二次製品を現地で据え付ける方法もあります。

コンクリート二次製品は、工場という安定した環境で製造されるため、品質にばらつきが出にくいという特徴があります。また、現場での養生期間が不要になる分、工期を短縮しやすく、トータルで見た場合のコストを抑えやすいという利点もあります。

フジコンでも、L型擁壁をはじめ、設置場所や用途に応じたさまざまなコンクリート二次製品を取りそろえています。

ブロック・石積み擁壁

ブロックや石を積み重ねてつくる擁壁です。比較的施工しやすく、高低差の小さい場所や、デザイン性を重視したい場所に採用されることがあります。

ただし、材料や施工の方法によっては、法令が定める構造基準を満たさない場合もあります。恒久的な擁壁として用いる際には注意が必要です。

高さ2m以上の土留めや擁壁には建築確認申請が必要

擁壁を計画する際には、高さに応じた法的な手続きも押さえておく必要があります。建築基準法施行令では、高さが2mを超える擁壁を「工作物」と位置づけ、建築基準法第6条にもとづく確認申請の対象としています。

ここで注意したいのが、前述した「掘削深さ1.5mを超える場合の土留め」との違いです。1.5mの基準は、施工中の安全確保を目的とした土工事の規定です。一方、2mの基準は、恒久的な構造物としての擁壁が対象となる建築確認上の規定です。

同じ「土留め」という言葉で語られがちですが、両者を分けて理解しておくことで、必要な手続きの見落としを防げます。また、確認申請を行ったあとは、工事完了後に完了検査を受け、検査済証を取得しておくことも重要です。

検査済証がない擁壁は、維持管理の状態にかかわらず、法的に安全性が確認された構造物とはみなされにくくなります。将来的な改修や用途変更、管理の引き継ぎの際に、想定外の対応が必要になる可能性もあるため、早い段階で手続きを済ませておくことが望まれます。

出典:e-Gov法令検索「建築基準法」

出典:e-Gov法令検索「建築基準法施行令」

まとめ

土留めは、土砂の崩壊を防ぐという基本的な役割にとどまりません。境界の明確化や土地の有効活用、そして法令にもとづく安全確保まで、幅広い場面に関わる構造物です。仮設の土留め壁と、恒久的な擁壁とでは求められる性能も異なります。

地盤の条件や施工条件、将来の維持管理まで見据えたうえで、工法を選定することが欠かせません。創業59年、コンクリート二次製品の製造・販売に取り組んできた藤岡コンクリート工業株式会社が手がける「フジコン」は、工場生産による品質の安定した擁壁を通じて、安全で効率的なインフラ整備を支えています。

設計図面データの提供にも力を入れており、建設計画を迅速に進めたい方の心強いパートナーとなります。土留めや擁壁の工法選定でお悩みの際は、豊富な実績と迅速な対応力を備えたフジコンにぜひお気軽にご相談ください。

フジコンでは、製品の図面データをダウンロードできます。
ぜひご活用ください。