コラム

プレキャストコンクリートとは?仕組みやメリット・デメリット、活用シーンを解説

道路や水路の設計では、工期の短縮と品質の確保を同時に求められる場面が少なくありません。そこで役立つのが「プレキャストコンクリート」です。

本記事では、プレキャストコンクリートの意味と仕組みから、メリット・デメリット、活用シーン、RC工法との違い、種類までを土木の視点で整理します。読み終えるころには、案件の初期段階で採用の可否を判断するための基準と、理解を深めるために役立つ基礎知識を整理できます。

プレキャストコンクリートとは

プレキャストコンクリートとは、工場などであらかじめ製造しておき、現場では据え付けと組み立てだけを行うコンクリート製品や部材の総称です。「プレキャスト(precast)」は、「あらかじめ(pre)成形する(cast)」という意味を持ちます。略して「PC」と表記されることもあります。

現場打ちコンクリートは、現場で型枠を組み、鉄筋を配置し、生コンクリートを流し込んで固めます。一方、プレキャストコンクリートは、打設から養生、硬化までの工程を工場で終えます。完成した製品をトラックで運び、クレーンなどで所定の位置に設置します。

道路や水路まわりでは、すでに身近な存在です。代表的なものとして、道路脇の側溝やマンホール、地中の水路や通路を確保するボックスカルバートなどがあげられます。

土木分野では、JIS(日本産業規格)によって形状や性能などが定められた製品が多く使われています。プレキャストコンクリート製品にも、共通する基本事項を定めたJIS A 5361があります。規格が統一されていることで、製品の仕様を比較しやすく、全国のさまざまな現場で活用できます。

つまり、プレキャストコンクリートは「現場でつくる」のではなく、「工場でつくったものを現場で組み立てる」という考え方の資材です。以降の見出しでは、この前提をもとに、メリットとデメリット、使われる場面、RC工法との違い、種類を順に見ていきます。

プレキャストコンクリート工法のメリット

プレキャストコンクリートを採用する利点は、品質、コスト、工期、環境の4点に整理できます。いずれも、製造を工場で行い、現場では組み立てに専念するという仕組みから生まれるものです。

部材の品質が高く均一的

プレキャストコンクリートは、温度や湿度が管理された工場で製造されます。現場打ちのように、天候や作業員の熟練度に仕上がりが左右されにくい点が強みです。また、精度の高い鋼製型枠を使えるため、寸法のばらつきも小さくなります。同じ規格の製品であれば、どれを選んでも同じ性能を期待できます。

設計時に強度や寸法を前提として組み込みやすく、施工後の品質確認も進めやすくなります。品質のばらつきが少ないことは、完成後の維持管理を考えるうえでも安心材料です。

コストを抑えられる

工場では、鋼製型枠を繰り返し使って同じ部材を量産できます。型枠や材料の無駄が減り、部材づくりの効率が上がります。

さらに、現場での型枠の組み立てや解体、コンクリートの打設といった作業が減ります。人件費や仮設資材の費用を抑えやすく、工期が短くなればその分の管理費用も軽くなります。製品そのものの価格だけでなく、現場全体にかかるトータルコストで見ると、現場打ちより安価になりやすいのがプレキャストコンクリートの特徴です。

とくに、側溝のように同じ部材を数多く使う工事では、コスト面の効果が出やすくなります。ただし、運搬や重機の費用は別に必要です。次の章で解説するデメリットとあわせて、総合的に比較しましょう。

工期を短くできる

工場での製品づくりと、現場での基礎工事などを並行して進められるため、全体の工期を短縮しやすくなります。さらに、現場でコンクリートが固まるのを待つ養生期間も不要です。据え付けが終われば、すぐに次の工程へ進めます。道路まわりの工事であれば、通行止めの期間を短くし、早めに開放できる点もメリットです。
また、現場打ちのように天候や気温の影響を大きく受けないため、通年で施工しやすくなります。雨が続く時期でも、スケジュールを組みやすいでしょう。

環境に配慮できる

工場で規格化された鋼製型枠を使うため、現場で型枠を使い捨てにするような廃棄物が出にくくなります。また、薄い断面で必要な強度を確保できる製品も多く、資源を有効に使えます。

さらに、現場では、コンクリートの打設音や型枠を解体する音が減ります。工期が短くなれば、周辺の住民や通行者への影響も少なくなることが見込めます。工事による騒音や環境への負荷を抑えられることは、住宅地に近い現場で大きな利点になります。

プレキャストコンクリート工法のデメリット

メリットの多いプレキャストコンクリートですが、注意しておきたい点もあります。採用を判断するときは、メリットとデメリットの両面を理解しておくことが欠かせません。

デメリットの多くは、設計と計画の段階で先に手を打つことで対処できます。

接合部の耐久性が低くなりやすい

製品単体の品質は、工場で管理されているため高い水準にあります。ただし、部材同士をつなぐ接合部は現場で施工するため、強度にばらつきが出るおそれがあります。たとえば、継手や止水の処理が不十分だと、漏水の原因になりやすいのです。

対策として、接合部の数を減らせる大型の製品を選ぶ方法があります。あわせて、施工方法を事前に確認し、現場での管理体制を整えておくことも大切です。

規格外の施工は難しい

プレキャストコンクリートは、工場にある標準の型枠を使うことで効率化を図っています。特殊な形状や特注のサイズが必要になると、専用の型枠をつくらなければなりません。そのため、型枠の製作費がかかり、コストや工期の面でメリットが薄れてしまいます。

設計では、まず規格製品で対応できるかどうかを検討するのが基本です。現場の地形に合わせた細かな調整が必要な部分は、現場打ちと組み合わせる方法もあります。

設計から輸送計画まで事前に練る必要がある

製品を工場で先につくるため、着工後に急な仕様変更をするのは難しくなります。あとから寸法を変えたくなっても、簡単には対応できません。また、大型の製品を運び、吊り上げて据え付けるためには、道路の幅員や搬入ルート、重機を置くスペースを確認しておく必要があります。

こうした制約を踏まえ、設計の初期段階で、製品の割り付けと搬入の計画をあわせて検討しましょう。図面データを早めに入手できれば、計画に組み込む作業がスムーズに進みます。

立地によっては輸送費がかかる

プレキャストコンクリート製品は、工場から現場まで運ぶ必要があり、距離が遠いほど、輸送費は高くなりやすくなります。加えて、搬入の回数やトレーラーで運べるかどうかなど、条件によっても費用は変わります。小規模な案件では、輸送費の割合が大きくなり、割高になるケースもあります。

採用を検討する際は、製品の価格だけで判断しないことが重要です。輸送費や重機の費用を含めて、現場打ちとのトータルコストを比べましょう。

プレキャストコンクリート工法が使われる主なシーン

プレキャストコンクリートは、道路、河川、農地、宅地造成など、土木のさまざまな場面で使われています。ここでは、設計者が案件での採用をイメージしやすいように、代表的な製品を6つ紹介します。

側溝

側溝は、道路や敷地の雨水を排水するために設置される、もっとも身近なプレキャストコンクリートです。基本となるU字側溝のほか、上に蓋をかける落蓋式側溝、水路の勾配を変えられる自由勾配側溝など、豊富な種類があります。

さらに、天端に連続したスリットを設けて集水能力を高めた製品や、騒音や振動を抑える消音タイプもあります。

側溝とは?工事の必要性から種類ごとの特徴まで分かりやすく解説

用排水路

農業用水や排水を、川などの水源から離れた場所へ引くために、人工的につくられた水路が用排水路です。農業土木の分野で、プレキャストコンクリート製品が広く使われています。

代表的な製品がベンチフリュームです。「アゴ」と呼ばれる部分に隣接する製品の端部を重ねて据え付ける構造で、止水性の向上が期待できます。現場では製品を順番に据え付けていくことで施工できます。

道路の舗装や境界ブロック

道路と歩道を分ける歩車道境界ブロック(縁石)も、身近なプレキャストコンクリートです。道路の利用者が歩道と車道をはっきり見分けられるようにするほか、車がぶつかっても簡単に倒れないよう、一定の深さまで地中に埋めて設置します。交通事故の減少にも役立っています。

道路や歩道には、縁石だけでなく、舗装に使われるプレキャストコンクリートもあります。インターロッキングブロックは、石を敷く舗装の代わりとして広まった製品です。表面が着色されているため、歩道、車道、自転車道の区分が明確になり、景観性と視認性の向上につながります。

最近は、緑化できるブロックや、保水性を持つ高機能な製品も増えています。

擁壁

擁壁は、土を切り取ったがけや盛土を安定させるための、コンクリート製の壁です。道路工事や宅地造成で、土留めとして使われます。

L型擁壁は、断面がL字の形をしており、プレキャストコンクリートなら据え付けだけで壁をつくれます。積みブロックは、古くから使われてきた石積みをコンクリート製品にしたものです。人手不足を背景に、重機で施工できる大型の製品が増えています。

擁壁とは?種類や耐用年数・トラブルの回避方法を解説

ボックスカルバート

ボックスカルバートは、地中に水路や通路を確保するための、箱型の製品です。雨水や下水の排水路として使われるほか、人や車が通る通路(アンダーパス)にも使われます。

地中に埋まっているため、目にする機会は多くありませんが、道路や河川の下を通す構造物として、土木工事に欠かせない存在です。大型の製品を据え付けることで、現場での作業や工期を大きく減らせます。

貯水槽

貯水槽には、目的の異なる複数の種類があります。

ひとつは、雨水を一時的に貯めて河川へ少しずつ流す雨水貯留施設です。ゲリラ豪雨による洪水や都市部の浸水を防ぐ役割を担っており、近年その重要性が高まっています。

もうひとつは、消火活動に必要な水を確保する防火水槽です。地下に設置されることが多く、消防法にもとづく「消防水利の基準」を満たす必要があります。

プレキャストコンクリート工法とRC工法の違い

ここまで解説してきたプレキャストコンクリート工法と、現場でコンクリートを打設するRC工法(現場打ちの鉄筋コンクリート)は、どこが違うのでしょうか。どちらが優れているというより、条件に応じた使い分けが重要です。

まずあげられるのは、工期です。プレキャストコンクリート工法は、工場での製造と現場の基礎工事を並行して進められ、養生期間も不要です。一方、RC工法は、型枠の組み立て、鉄筋の配置、打設、養生、型枠の解体と、現場での工程が多くなります。工期を短縮したい場合は、プレキャストコンクリート工法が適しています。

次に、天候の影響です。プレキャストコンクリート工法は、製造を工場で行うため、現場の天候や気温の影響を受けにくくなります。一方、RC工法は、打設や養生の時期の気象条件によって、品質や工程が左右されます。

品質の面では、プレキャストコンクリート工法は、管理された環境で製造するため、均一な品質を保ちやすくなります。RC工法では、作業員の技術や現場の条件が仕上がりに影響します。

現場の作業員の数も違います。プレキャストコンクリート工法は、据え付け中心の作業なので、少ない人数でも施工できます。RC工法は、型枠工や鉄筋工、打設の作業員など、多くの人手が必要です。

騒音の面では、プレキャストコンクリート工法は、打設音や型枠の解体音が出ないため、周辺への影響を抑えられます。

一方、設計の自由度では、RC工法が適しています。現場でつくるため、複雑な形状や、現場の地形に合わせた微調整に対応しやすいのです。プレキャストコンクリート工法は、規格製品が中心となるため、設計の自由度は限られます。

使い分けの判断軸は、次のように整理できます。標準的な形状の構造物で、工期の短縮や品質の安定を重視するなら、プレキャストコンクリート工法が向いています。複雑な形状や、現場でその場に合わせた調整が必要な構造物には、RC工法が適しています。

実際の現場では、両方を組み合わせるケースも少なくありません。

プレキャストコンクリート工法の種類

プレキャストコンクリートは、内部の補強方式による「構造」と、工場での固め方による「成型方法」という2つの視点で分類できます。専門的な内容ですが、製品を選ぶときの理解を深めるうえで役立ちます。

構造による分類

コンクリートの内部をどのように補強しているかによって、プレキャストコンクリートは3つに分けられます。

鉄筋コンクリート

鉄筋とコンクリートを一体にした構造です。コンクリートは押しつぶす力(圧縮)に強く、鉄筋は引っ張る力(引張)に強い性質があります。互いの弱点を補い合うことで、両方の力に耐えられます。もっとも一般的な構造で、側溝や擁壁など、多くのプレキャスト製品がこの構造でつくられています。

プレストレストコンクリート

高強度のPC鋼材を使って、あらかじめコンクリートに圧縮の力(プレストレス)を与えた構造です。引張の力によって生じるひび割れを防げるため、高い性能が求められる用途に適しています。橋梁や高速道路など、高い安全性が必要な公共構造物で使われています。また、支える間隔が長い部材にも向いています。

無筋コンクリート

鉄筋を入れず、コンクリート自体の重さや圧縮の力で成り立たせる構造です。無筋管や、自重で土を支える重力式擁壁などに使われます。なお、引張の力に弱いため、大きな力がかからない用途に限られます。

成型方法による分類

工場でコンクリートを型枠に詰めて固める方法にも、いくつかの種類があります。製造方法によって、製品の強度や、つくれる形状が変わります。

振動締固め

型枠に生コンクリートを投入し、型枠に振動を与えて、すき間なく締め固める方法です。もっとも標準的な製法で、側溝や擁壁、ボックスカルバートなど、多くの製品がこの方法でつくられています。製造後は、高温の蒸気で養生することで硬化を早め、脱型までの期間を短縮します。

遠心力締固め

筒状の型枠にコンクリートを入れ、型枠を高速で回転させて、遠心力で成型する方法です。余分な水分や空気が抜けるため、緻密で強度が高く、表面がなめらかな製品になります。ヒューム管(下水道などに使われる管)や電柱、コンクリート杭などの製造に使われます。

加圧締固め

型枠にコンクリートを入れたあと、圧力をかけて締め固める方法です。余分な水分が抜けて、強度や耐久性が高まります。主に、地盤や水を止める壁として使われるコンクリート矢板などの製造に使われます。

振動・加圧締固め(即時脱型)

水の量が少なく流動性のない「超硬練りコンクリート」を型枠に入れ、強い振動と加圧で固める方法です。成型した直後に型枠を外せるため、生産効率に優れ、耐久性も高くなります。複雑な形状の製造は難しく、主に小型のブロック類に使用されます。

まとめ

プレキャストコンクリートは、工場であらかじめ製造した製品や部材を、現場で組み立てる工法です。品質の安定、工期の短縮、現場作業の省力化を実現でき、現代の土木に欠かせない存在といえます。

一方で、接合部の処理、規格外への対応、搬入や重機の計画、輸送費には注意が必要です。設計の初期段階から製品の選定と搬入計画を検討し、現場打ちとのトータルコストを比べて判断しましょう。標準的な形状で工期や品質を重視するならプレキャストコンクリート、複雑な形状や現場での調整が必要ならRC工法という判断軸が、採用可否を決める助けになります。

フジコンは、昭和47年の創業以来、側溝、擁壁、ボックスカルバートなど、さまざまなコンクリート二次製品を提供してきました。とくに、設計計画に組み込みやすいCAD図面データへ、すばやくたどり着ける点が強みです。現場の状況に応じた最適な製品のご提案も行っています。

製品カタログの閲覧やCADデータのダウンロード、仕様のご相談は、フジコンまでお気軽にお問い合わせください。

フジコンの公式ホームページでは、さまざまな商品の図面データをダウンロードできます。設計業務を効率化したい方は、ぜひご活用ください。